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専業主婦の佐藤真弓（中谷美紀）と住宅販売会社で働く夫・秀明（玉木宏）は結婚１３年目。娘・麗奈は受験戦争を乗り越え、名門中学に見事合格、そんな３人家族だ。
おおざっぱなところのある真弓に対し、秀明は洗濯物のシワや食べ物の賞味期限が気になる細かい性格。2人の共通の友人・圭介が経営しているカレーカフェで、相手への文句を言い募る日々だ。
ある日真弓は、以前旅行代理店で仕事をしていた時の同期・由紀にたまたま再会し、仕事に復帰してはどうかと誘われる。そのころ秀明は、秀明の会社のモデルハウスにやってきた茄子田太郎（ユースケ・サンタマリア）と妻の綾子（木村多江）を接客していた。秀明が建て替えてはどうかと提案しますが、太郎は上から目線で文句ばかり、一筋縄ではいかないやっかいな人物のようだ。
その夜、真弓は職場復帰について秀明に相談するが、秀明にはそんなの無理だと鼻で笑われ、カチンときた真弓は再び仕事をすると決意する。後日、茄子田家に営業しに行った秀明だが、太郎は適当なことばかり言う。その帰りがけ、茄子田の妻・綾子から夫が失礼なことばかりと謝罪された秀明は、儚げな雰囲気を持つ綾子の健気な様子に思わず心を奪われてしまう…。
一方、張り切って仕事を始めた真弓だったが、環境の違いに予想以上に苦戦することになる。落ち込んで家に帰った真弓は、家事を協力してくれない秀明につい文句を言ってしまう。二組の夫婦にすこしずつ見えない亀裂が入り始め…

好きな相手と一緒にいたいという価値観から見た場合、夫婦という形態はこれに合致しないものなのかもしれません。このドラマはすれ違う2組の夫婦の波乱をドラマチックに描いたもので、人生に悩む大人たちのリアルな姿を描いた作品です。佐藤秀明(玉木宏)と真弓(中谷美紀)夫婦は一人娘の麗奈(桜田ひより)と共に、ごく平穏な家庭生活を送っていますが、慌ただしく生活に追われる日々の中でお互いへの不満が大きくなり続けています。一方、茄子田太郎・(ユースケ・サンタマリア)と綾子(木村多江)夫婦は不仲では無いものの、綾子は茄子田家内で大事にされておらず辛い日々を送っています。とある理由から茄子田家に訪れた秀昭はひょんなことから綾子と関係を持つようになり、というところから物語は始まります。仕事や家庭内のストレスが徐々に相手への不満にすり変わっていき、自身が置かれた環境を壊す行動へと駆り立てられていく登場人物達の姿は特別でも何でもなく、とてもありふれた情景である所がこのドラマの見所です。このドラマは大人向けなので登場人物達はさほど突飛な行動を取ることも無いのですが、それだけに一つ一つの選択がやたらとリアルで、この状況ならそうするかもな、という納得を持って鑑賞できます。登場人物達が身を擦り切らしながらも前進し、成長する姿には大人ならではの凄みに溢れています。

玉木宏、木村多江、中谷美紀など実力と人気が伴った役者が多数起用されており、脇役に苗木優子やトリンドル玲奈が登場するなど非常に豪華な顔ぶれとなっています。その中でも木村多江さんの演技は圧巻の一言で、普段のイメージからは全く想像できない姿はまさに怪演といえるでしょう。ユースケ・サンタマリアさんとの夫婦役もリアルで違和感がなく、言い争う様子は本当の夫婦なのではないかと思えるほど臨場感に満ちています。普段はおちゃらけたイメージのユースケさんですが、今作ではシリアスな演技が光る役どころで、回が進むにつれてどんどん男前な雰囲気が増していく様も見どころの一つとなっています。その他、間抜けな姿が目立つ玉木宏さんなど、これまでのイメージを覆すような部分も多い、非常に良くできたドラマです。

佐藤真弓（中谷美紀）・秀明（玉木宏）夫婦と茄子田綾子（木村多江）・太郎（ユースケ・サンタマリア）夫婦に起こる大小の問題がリアルに描かれていてハラハラドキドキの連続でした。特に、真弓が秀明と綾子の浮気に気づきはじめた頃、そして秀明が白状したシーンではこれがうちの旦那だったら…とモヤモヤしてしまう程でした。ニコニコしていい人そうな秀明の浮気がけっこうリアルにショックでしたね。そこからは、真弓と太郎のやり取りが変におもしろかったり、嫌な女にしか見えなかった綾子に同情する気持ちが生まれてきたり、見るたびに登場人物への見方が変わっていって飽きずに最終回まで見れました。最初は秀明がカッコ良くてキラキラして見えたけど、進むにつれて他の３人の方がどんどん魅力的に見えていったなぁ…

注目キャストは茄子田綾子役の木村多江さんです。中谷さん演じる真弓は明るくてカラッとしてて言いたいことなんでも言って…反対に、おとなしくて言いたいこと言えないけど家庭的で守りたくなる男ウケしそうな綾子にイラっとさせられますが、実際こういうタイプの奥さん多いと思います。ケンカしたり怒らせたりするくらいなら黙っておこうって。でも、胸の中にはいろんな思いを抱えてて浮気する大胆さは持ってるっていう。。。そういう絶妙な普通さを、木村さんが見事に演じているなぁと思いました。普通の人の普通さと狂気のどちらもほんとに自然に演じられて器用な女優さんですね。そして、色っぽい。夫婦役のユースケ・サンタマリアさんからの愛の深さに気づく最後はとっても良かったです。

重い印象を持ちやすい不倫問題をコミカルに表現していて誰でも楽しめる内容となっており、見ていて飽きの来ないドラマであり続きが気になるドラマでした。不倫ドラマは、どこか夢物語チックな内容となっているドラマが多い中できちんと現実にもスポットを当てており感情移入しやすい内容となっておりました。また、家族並びに夫婦関係の難しさを改めて痛感させられ、元をたどれば他人同士であった2人が結婚を機にひとつ屋根の下で暮らすこととは、理論上で考えると衝突して当たり前でありながら、年月が過ぎていくにつれて次第に相手への配慮がなくなると上手くいくものもいかなくなってしまう儚くもろいものなのだと改めて考えさせられました。

木村多江さん演じる茄子田綾子にとても魅力を感じ、今までとはまた違った木村多江さんを見ることができるので、ぜひ注目してみていただきたいです。ミステリアスな雰囲気を醸し出しながらも、男性をコロコロと転がし、どこかほおっておくことのできない印象を与えるというあざとい面も持つ女性である印象を当初は持ちましたが、実際は文句の付け所がなく旦那には絶対服従の姿勢をみせる完璧な主婦であった綾子。しかし、玉木宏さん演じる秀明との突然の出会いを機にかぶっていた鉄の仮面が取れてしまい、絶対に開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまうのです。開く前に心を閉ざし、今の生活を大切にするために後戻りするという選択もあったはず…。